僕の妄想パート①

僕の名前は、斎藤卓也。

 

自分で言うのもなんだが、物凄くプライドが高い。そのせいもあってか、プライドを守るためによく嘘をつく性格である。

 

高校に入り、至って平凡な生活が続いていたわけだが、ある日突然とある組織に入りあんなことになるとは、この時点の僕にはまだ分かるはずもなかった。

 

学校でのありふれた授業が終わり、軽い鞄片手に、家路を何気なく歩いていると、ふと見覚えのないチラシが自動販売機に貼られていた。

 

そこには「団員募集」とだけが書かれているだけのシンプルなチラシ。しかし、そのシンプルさが僕の心を動かしたのかは分からないが、僕は無意識のうちに「団員募集」の文字の下に書かれている電話番号に電話をかけていた。

 

「もしもし?こちらWMZR東京支社ですが、どなた様でしょうか?」

 

僕のテンションとは裏腹に、元気そうで明るい声が聞こえてきた。

「あ、あのチラシに「団員募集」って書かれていて、それで電話したんですけど」

 

「それでしたら、明日東京へ来ていただけませんか?」

 

「え、東京ですか?」

 

「はい!具体的な場所と日時は、後程また連絡させていただきます」

 

「え、え」

 

「ピーピーピー」

 

電話は切れてしまった。あまりの突然の出来事に唖然としていた僕だが、すぐに我に返り、再び自宅への帰り道を歩き始めるのであった。

 

「だいたいWMZRってなんなんだよ。」

「急に東京へ来いだって?あまりにも急すぎるだろ」

 

そんなことをぼやきつつも、ちょっとした「非日常感」に少しだけ胸が高鳴っていたことも事実。自分で言うのもなんだが、今の人生には飽き飽きしていたのだ

 

いつものように朝起きて、顔を洗い、制服に着替え学校へ行く。そこでは一方的な授業を受け、不毛でしかない友達との会話をし、家へ帰る。そんな誰かが決めたかのような、レールでしかない人生を毎日毎日続けていた僕にとって、今日の電話での会話は実に新鮮であったのだ。

 

「お兄ちゃん、おかえりー」

 

家へ帰ると、2つ下の妹がいつも以上の元気で出迎えてくれた。僕からしたら鬱陶しくてたまらない妹だが、その笑顔を見ると憎むにも憎めないところがもどかしい。

 

僕の家族は、父と母と妹の4人家族。父の勇夫はバリバリのサラリーマンで、毎日汗水たらしながら家族を養うために残業の毎日。母の咲江は近くのパートでレジ打ちをしながら、僕の高校の教育費を賄ってくれている。妹の節子は、来年の受験を控え、駅近くの学進ゼミナールという塾で、苦手な数学と英語を習っているが、あまり伸びずに苦労しているらしい。

 

で、本題の僕だけど、塾へは行ってないし、バイトもやってない。強いて言うならば、部活でバスケをやっているが、1週間前にアキレス腱を痛めてからは休部中。

 

家に帰ってからは、YouTubeだったり、ゲームだったり、趣味でやっているギターを弾いたりしている。趣味と言ってもたまにやるくらいで、うまいってもんじゃない。世間の言葉を借りれば、ちょっと毛が生えたくらいって言えばいいのか、まぁそんなもんだ。

 

勉強は大の苦手だが、美術だけはいつもオール5。小学生の頃からずっと美術だけは得意で、県のポスターコンクールに入賞した経験は何度かある。高校に入ったら美術部に入ろうとは思ったが、週4日の部活と聞いて飽きらめた。

 

「卓也ーご飯できたわよー」

 

 

1階で母が呼んでいる。腹は減ってはないが、食べ物にうるさい母なのでいやいや階段を下りていく。リビングに入ると、相変わらず妹の節子がTVを見ている。

「節子、ご飯時くらい、ちゃんと食べなさい!」

「今いいとこなのー」

 

妹の節子は、大のジャニーズ好きで、中でも市島俊介というボーカルが好きみたいだが、ジャニーズに全く関心のない僕からしたらどうでもいいことだ

 

今日の飯は、シチューに鮭のムニエル。シチューには鶏肉やら野菜やらがたくさん入っている。しかもにんじんまで。

 

「母さん、俺にんじん嫌いだから入れないでって言ったじゃん」

 

「卓也。嫌いでも嫌いでなくても栄養あるんだから食べなさい」

 

またこれだよ。度々繰り返される斎藤家の日常。

 

にんじんが嫌いになったのは、中学生のころ。弁当に生なのか、焼いたのかは分からないにんじんを食べてから、見るだけで嫌になった。それからというものの、料理ににんじんが入るたびに、こんな会話が繰り返されている。

 

「ごちそーうさまー」

 

早々に飯を食べて、2階の部屋へと足早に向かう。部屋に入った途端、ベッドで横になり、真っ白な天井を見つめため息をつく。

 

「はあ、つかれたな」

「明日も....学校か。」

 

明日への虚無感を抱いていた時、一本の電話が鳴った。